出版社の新しい収入源を考える(後編)
昨日の前編では「Ebyline」の事例を取り上げて、出版社自身も自社で保有する記事をWEBサイトや新聞などの他媒体へ販売することができる可能性についてNOTEをとりました。きょうは「記事を有料で買うニーズ」が生まれそうな気配について、NOTEをとりたいと思います。
皆さんは「Demand Media」という会社をご存知でしょうか。米国のIT業界に詳しい方はご存知かもしれません。ご説明いたしますと、Demand Mediaはアルゴリズム技術を使ってユーザーが欲しい情報が何かを分析して、それに合致する記事やビデオなどのコンテンツを自社のネットワークを通じて配信する会社です。簡単にいえば、Googleで検索されそうなキーワードを予め予測し、そのニーズに合わせてコンテンツを生成するわけです。米国では「コンテンツファーム(Content farm)」や「コンテンツミル(Content Mill)」と呼ばれることが多いようです。「検索エンジンで上位にくるコンテンツをつくれるかが勝負」という逆転の発想がおもしろいですよね。なんとDemand Media には13,000人以上のフリーランスのライターがいて、1日5000ページのコンテンツを作成していると言われています。2010年12月現在のDemand Mediaネットワークの訪問者数は6億7,300万と大規模なネットワークとなっているそうです。その集客力を利用して広告収入を得ています。
余談ですが、私がこの「Demand Media」の存在を知ったのは、昨年の3月にドイツのベルリンで開催されたFIPP(http://www.fipp.com/)主催の「世界雑誌会議」に参加したときです。ゲストスピーカーとしてDemand Mediaの人がプレゼンをされていました。検索エンジンのアルゴリズムを解析してコンテンツを生成するという発想に衝撃を受けました。めちゃくちゃ儲かっているって言っていたのが印象的でした。
さて、ここで重要なことが人にとっておもしろいかどうかのコンテンツの質ではなく、検索エンジンにとってキーワードの関連性が強いかどうかを基にコンテンツを制作している点です。要するに薄っぺらいつまらないコンテンツが量産されて、そのコンテンツが検索結果の上位を占めてしまっているわけです。これは検索エンジンの信頼性を揺るがす見過ごせない事態なわけです。
米国Googleはこの問題に対応するため、スパム対策強化のためにアルゴリズムを強化していく方針を発表しました。その中には名指しにはされないものの、コンテンツファームも含まれています。(参考:ASCII.jp「Googleが指摘する”コンテンツファーム”とは? Demand Mediaのコンテンツミル問題」http://ascii.jp/elem/000/000/584/584967/)
一方で、GoogleはTwitterやFacebookといったソーシャルメディアからのリンクを検索エンジンのアルゴリズムに加えるような動きもあります。(参考:読売新聞「2011年のサーチマーケティング展望…SEO業界の変化」http://www.yomiuri.co.jp/net/news/internetcom/20110131-OYT8T00288.htm)Twitterを利用されている皆さまなら、一度は自分のフォロワーからシェアされたニュースやサイトのリンクにアクセスされたことがあるのではないかと思います。
つまり、検索エンジンのアルゴリズムもロボットだけの時代から、ロボットと人間の両者がコンテンツの質を判断する時代になってきているのです。ハイブリッド化する検索エンジンはWEBサイトのコンテンツに大きな影響を与えるのではないかと思います。
また、同じ意味においてニュースサイトなどサイトへのアクセス流入元として主要なプレイヤーになりつつあるのはTwitterでありFacebookです。人によってシェアされたコンテンツから流入するという点において、ソーシャルメディアは100%人間に依存する検索エンジンといってもよいのかもしれません。
環境の変化については以上で、「記事を有料で買うニーズ」について。
スパム扱いを受けるコンテンツの増加は高品質なコンテンツを売るチャンスだと思います。また、ソーシャルメディア=人間のアテンションと好奇心を満たすコンテンツをつくれるのは雑誌なんじゃないかなと思うところもあります。
電車で通勤されていらっしゃる方なら、一度は週刊誌の中吊り広告にある記事の見出しを見て、「あれ読んでみたいな」と思ったことがある方がいらっしゃるんじゃないかと思います。そういった人のアテンションを生み出し、また記事を読んで満足させることができるプロフェッショナルこそ出版社ではないでしょうか。(もちろん異論反論あるかと思いますが)
出版社は雑誌を販売するだけではなくB2Bでコンテンツを販売する機会が増えるのではないかと思います(信じています)。企業が自社メディアを持ちたがる時代になったこともそれを後押ししていると思います。ちなみに個人的にはB2Cでの雑誌記事の切り売りは有り得ないと考えていますが、それはまた別の機会にお話いたしましょう。
なお、もし事実誤認などがございましたら、Twitter(http://twitter.com/ro_mi)やFacebook(http://www.facebook.com/hiromi.kubota)などでお知らせいただけると大変に助かります。ご意見や感想などもいただければとても参考になります。よろしくお願い致します。
