新しいサイバネティックス(The New Cybernetics)

先日、2011年5月14日にシリコンバレーのスタンフォード大学で開催されたTEDxのイベントで、米「WIRED(ワイヤード)」誌の編集長Chris Anderson(クリス・アンダーソン)氏がスピーチをした内容の概要がVentureBeat掲載されていました.。

最近、「これからはソーシャルの時代だ!」とか「チェックインによるインタレストグラフが重要」とか、日本では様々な方が色々な言い方で説明していることについて、いまいちピンときておらずもやもやしていたのですが、Anderson氏がこの記事で話している内容が一つのインスピレーションを提示してくれていると思いました。皆様とシェアすべくNOTEにとりたいと思います。

VentureBeat:「Wired’s Chris Anderson: How accelerometers make life better」

このTEDxのテーマはLiving by Numbers」です。和訳が難しいと思うのですが「多くの人たちと生きること」みたいな意味でしょうか。Anderson氏は表す言葉がないと前置きしつつ「The New Cybernetics」という言葉でテクノロジーが私たちの行動を測り、そしてより良くする新しい方法として登場してきたことを述べて、3つの大きなシフトが起こっていると説明しています。

第一は“ホーソン効果(Hawthorne effect)”[コトバンクへ外部リンク]として一般的に知られている現象についてです。すなわち、人は誰かから見られているとより良い行動をするということです。Anderson氏はまず「テクノロジーは私たち自身が私たち自身の行動を見るということを可能にした」と述べています。

第二のシフトはそれをもたらすテクノロジーの進歩についてです。Anderson氏はムーアの法則[ウィキペディアへ外部リンク]が当てはまることはコンピューターチップだけではなくセンサーも同様で、より小さくて、より安価で、より性能の良いセンサーが登場して普及していることを挙げています。

第三のシフトはそれがもたらす効果についてです。センサーによって身のまわりの世界を測ることができるようになり、またそのデータがソーシャルにシェアされることによって、あるいはゲームのメカニズムが加わることによって、「私たちの行動がどう変わるのか?」という疑問をAnderson氏は投げかけています。Anderson氏が例として挙げているのは、例えばWiFi機能の付いた体重計によって家族全員の体重を知り健康管理に役立てるということです。体重を見えるようにすることでどんなエクササイズをしたらいいのかをレコメンドしてくれるなど、人の行動自体を変えていくのではないかという話でした。特に健康に関連したデータについては、その重要なキーとして“continuity of data.(データの一貫性)”という言葉を使い、同じ病院に行かなくても連続性のある健康データを使うことでより効果のある治療が行えるメリットについて言及しています。

ここまでが記事の要約ですが、皆さんはどのような感想を持ちますでしょうか?

私はちょうどNHKの「ITホワイトボックス」[外部リンク]で 「ITが導く“みんなの医療”」をたまたま見ていたので、「これか!」と思いました。また、このフレームが提示されることでいろいろなことが頭の中でつながりました。

例えば位置情報。「foursquare」という位置情報に基づいたソーシャル・ネットワーキング・サービスがなぜ登場したのかということを突き詰めると、携帯電話やスマートフォンにGPSが組み込まれているからです。日本版「foursquare」ともいえる「コロニーな生活☆PLUS(通称コロプラ)」は位置情報というデータにゲームのメカニズムを付加することによって、ユーザーの行動を変えています(参考:japan.internet.com「『移動するのが楽しくなる!』 出張サラリーマンがハマる「位置ゲー」の魅力とは」)。ランニングをサポートするアプリが登場したのもGPSとスマートフォンに内蔵されている加速度センサーというテクノロジーが普及したゆえのことと言えます。位置情報と食べ物の情報を共有するサービス「Foodspotting」[TechCrunchへ外部リンク]は位置情報に加えてスマートフォン内蔵カメラで画像というデータを生成できなければ成立しません。もちろんテクノロジーはスマートフォンに限ったことではありません。例えば「Shopkick」[TechCrunchへ外部リンク]は店舗の入り口にセンサーを置くことにより、アプリを立ち上げていれば自動的にチェックインすることを可能にしています。

このように考えていくと“ライフログ”や“行動履歴”という言葉で語られてきたコンテクストとは違う地平線が見えてきませんでしょうか。今までは「ユーザーから集めたデータをどうやってサービスに活用するか」という議論に終始しており、プライバシー侵害の問題などで足踏みしていることが多かったのではないかと思います。しかし、Anderson氏が提示してくれたフレームは、集められたデータをソーシャルにシェアする、またはゲームのメカニズムを付与することにより(参考:NOTE「進化するゲーミフィケーション」、「どのように私たちの行動をより良くしていけるのか」というものです。ソーシャルグラフやインタレストグラフを集めることだけが重要なのではありません。それらを使うことで、出かけるのが楽しくなる、走ることが楽しくなる、食べることが楽しくなる、買い物が楽しくなるなど、「私たちの行動をどう変えていくのか」という視点、すなわち“行動(behavior)”を軸に考えることが大事だということです。これはWebやアプリなどのサービス設計にも必要なフレームだと思います。

もっと言えば、もしかしたら“センサー”はメタフォリカルな表現なのかもしれません。「Causes」におけるFacebookはセンサーだと言えないでしょうか(参考:現代ビジネス「フェイスブックユーザーの5人に一人が使う寄付プラットフォームアプリ「Causes(コーズ)」の威力」)。私はそんな気がしました。

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